理事長 ご挨拶

 日本家庭電化製品修理業協会(通称J-HARB)は2015年の発足から8年目を迎えることになりました。当初数十人の有志(同志)でスタートいたしましたが、現在では90社以上・1,100名以上の修理エンジニアに日々活躍いただいております。またお取引いただいているメーカー様や販売店様は6社におよび、年間の処理件数も2022年の実績では約40,000件になり、関係各位の努力で順調に歩みを進めております。
 さらに当協会は、発足当時のネットワーク以外にも強力なパートナーとのコラボレーションも実現でき、順調に全国をカバーする家電修理サービス体制を構築しつつあります。
 しかし、この8年間で修理エンジニアの年齢は確実に上がっており、すでに現役を退かれた方も多くいらっしゃいます。日本が高度成長期だった時代は、全国に国内家電メーカーの製造拠点があり、大量に販売された製品の修理対応を行う優秀な技術者を生み出す土壌がありました。ところが生産拠点が海外にシフトしてしまった現在では、新たに家電修理に携わるエンジニアが生まれる土壌が皆無になってしまったと言っても過言ではありません。
 また、家電修理エンジニアは高度なスキルに見合わない収入しか得られず、技術力より苦情処理力を重視せざるを得ないなど、職業としての魅力が著しく低下してしまったことも新たな家電修理エンジニアが育成できない要因として挙げられます。
 一方、自動車修理の世界では、家電業界とは異なり各自動車メーカーとも修理・メンテナンスを行うエンジニア養成の学校を設け、毎年多くのサービスエンジニアを生み出しております。その自動車業界でさえ、近年エンジニア離れが生じており、自動車関係者の中には「日本全国で約7,845万の保有台数がある自動車の修理・メンテナンスが今後危うくなる可能性がある」(保有自動車台数は一般社団法人日本自動車工業会調べ、2021年12月末現在)と、危惧される方もいらっしゃいます。家電業界だけでなく、今まで問題もなく順調に見えていた自動車業界においてもサービスエンジニアが職種として選ばれなくなってきているのが現実です。

差し迫る課題解決のために果たすべき使命

 そんな日本の状況の中で、J-HARBは今後どのような役割を果たしていかなくてはならないのか? 大変難しい課題を抱えております。
 喫緊の課題として、大きくは以下の2点が挙げられます。
 1. サービス体制の劣化(修理エンジニア不足、部品不足や供給の不安定さ、サービス業務に必要な資金不足等)が進行していく中で、ますます重要性が高まる「家電修理サービス」に対し、J-HARBの設立目的の一つでもある、国内の家電修理サービス業者間の連携をより一層強化しながら、同時に各メーカー・各販売店が個別に対応してきた家電修理サービスを統合していく方向に努力する
 2. 家電製品の修理率向上によってSDGsの観点からも社会的な重要性が高いことを内外に発信し、クライアントとの地道な交渉を続けることで修理エンジニアの諸条件を向上(収入、労働環境等)し、さらに社会的地位の向上を目指す
ーー等の実現に最大限努力しなくてはならないと考えます。
 とはいえ、そう遠くない将来に多くの商品が修理不能の時代を迎えることになることも想定されます。それでも、故障品のすべてを商品交換で対応することは不可能であり、絶対に避けなければなりません。仮に本格的な「商品交換対応」中心の時代を迎えたとしても、大量の粗大ごみを生み出すことを防ぐため、故障した商品の修理によるリユース活用も重要なミッションの1つになっていくものと考えております。
 私たち、家電品修理に携わる者の使命として、みなさまとアイデアを出し合いながら近未来の家電修理サービスのあり方を模索してまいりたいと思います。

日本家庭電化製品修理業協会
理事長
雙木 芳夫