【家電量販月次売上】記録的猛暑で7月は好調に推移

家電量販企業大手7社のうち、IR情報として月次売上速報を公表しているのはビックカメラ、ケーズホールディングス、エディオン、上新電機、コジマ(ビックカメラの子会社)の5社。いずれもPOS受注売上ベースの数字であり実際の販売額とは合致せず通期の売上等とも異なるが、家電量販企業の足元の販売動向や月々の変化などを知る上で重要な情報となる。
2023年7月度の月次売上速報が出そろった。

家電量販企業5社の7月度売上速報

2023年7月度 家電量販月次売上速報

7月は夏商戦(ボーナス商戦)では最も重要な月であり、春以降は「外向き消費」志向にシフトする中で苦戦を強いられた家電量販店にとっては売上・利益のばん回、上乗せのタイミングである。当然、主力となるの天候要因に左右されやすいエアコンを始めとする季節家電になる。
6月はかなり暑い日もあったが前年と比べるとエアコンの動きが鈍く、天気予報で「かなり高温の夏」と言われながらもかなり懸念されていたのだが、その心配はきれいに吹き飛んだ。
7月は観測史上、最も高い平均気温を記録して各地で猛暑日が続出。「熱中症対策としてエアコンや扇風機などを極力利用する」「節電対策として10年以上使用しているエアコンは省エネタイプに買い替えた方がお得」といった報道が毎日繰り返されたこともあり、エアコンへのニーズは一気に高まった。
前年は6月中旬から7月上旬の暑い時期に集中したが、その後は伸び悩んだ。7月はその対比という点があるものの、月次売上速報を公表している家電量販店は軒並み前年を大幅に超える売上があったと推察される。
ここ数年は「早めの夏到来」「9月まで残暑が長引く」といった、どちらかといえば短期集中の販売増加だった。まだ断定ができる段階ではないが、8月上旬までの暑さを考慮すると、例年以上に長期間のエアコン商戦となる可能性も高そうだ。
ただし、エアコンが売れるだけですべて好調になるというわけでもない。他の商品カテゴリーを見ていくと、堅調なのは洗濯機や携帯電話、デジタルカメラくらいであり、AV家電の主力であるテレビは長期低迷から抜け出せず、パソコンも伸び悩み気味、猛暑であっても冷蔵庫は勢いがない…と、不安材料も多い。なによりも物価高は続き、光熱費のさらなる上昇も考えられる秋以降は、景気低迷が色濃くなり生活防衛意識によって「家電の買い替え」には回らなくなっていくことも十分考えられる。2023年度は前半をうまく乗り切れても、後半はかなり厳しくなるかもしれない。

ビックカメラ

ビックカメラ 月次売上速報 2023年7月
■月次売上(前年同月比)
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
2023年
4月
2023年
5月
2023年
6月
2023年
7月
106.5113.393.5106.4101.6104.0105.9104.2104.8103.9108.4113.4
■商品別・カテゴリー別売上(前年同月比)
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
2023年
4月
2023年
5月
2023年
6月
2023年
7月
音響映像商品110.3101.9106.2105.696.3101.0101.3101.5105.3102.4111.3114.0
家庭電化商品103.0108.1102.0100.0100.3100.0104.9101.9102.597.3101.7111.7
情報通信機器商品100.7111.472.694.396.699.095.193.891.993.796.199.1
その他の商品117.3137.2101.7134.0113.4120.9126.8134.3131.6133.4136.3132.6

ビックカメラの7月度は113.4%と9ヶ月連続のプラスとなった。2023年8月期は前年10月度を除いて各月ともプラスになっており、累計でも105.2%と好調に推移している。月次売上速報によると、「音響映像商品」はテレビがやや低調だったものの、デジタルカメラが好調でオーディオは堅調で前年同月比114.0%とテレビの低迷が顕著な他の郊外型家電量販店とは異なる動きを見せている。「家庭電化商品」は調理家電、エアコン、理美容家電が好調で、洗濯機が堅調に推移。「情報通信機器」はパソコン関連がやや低調だったが、スマートフォンは堅調だった。「その他の商品」はゲームや玩具、時計、医薬品、スポーツ用品など総じて好調だったとしている。

ケーズホールディングス

ケーズホールディングス 月次売上速報 2023年7月
■月次売上(前年同月比)
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
2023年
4月
2023年
5月
2023年
6月
2023年
7月
92.3106.197.893.1100.696.799.694.493.090.887.7109.9
■商品別・カテゴリー別売上(前年同月比)
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
2023年
4月
2023年
5月
2023年
6月
2023年
7月
テレビ87.596.587.088.693.487.886.278.286.282.991.798.5
パソコン・情報機器97.3100.5103.4109.9116.3116.0105.499.9102.191.589.387.8
冷蔵庫99.6113.095.195.8103.1103.6116.297.291.486.985.1101.0
洗濯機92.5120.3106.094.998.294.6103.198.098.892.4102.9105.4
クリーナー94.2105.6123.382.892.692.290.394.896.892.394.794.8
調理家電90.0100.499.396.098.194.495.290.599.193.5102.2106.9
理美容・健康器具97.5101.0100.7100.0103.0100.299.797.7106.5103.4106.0104.0
エアコン93.0131.898.286.1113.788.191.891.875.284.071.8137.0

ケーズホールディングスの7月度は109.9%と7ヶ月ぶりにプラスとなった。2024年3月期第1四半期は前年比マイナスが続いて厳しい状況になったが、累計では95.7%と持ち直している。商品別では猛暑の影響で「エアコン」が137.0%と大きくプラスになり、「理美容・健康器具」「洗濯機」「調理家電」が前月に引き続きプラスに。マイナスが続いていた「冷蔵庫」もプラスに転じた。
店舗状況は新店がなく、退店が1店舗(北海道)あり、月末店舗数は551店になっている。

エディオン

エディオン 月次売上速報 2023年7月
■月次売上(前年同月比)
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
2023年
4月
2023年
5月
2023年
6月
2023年
7月
全店97.8106.2101.597.8102.896.5103.097.297.797.890.6110.1
直営店97.7106.9101.499.0102.595.8103.597.197.997.490.4110.1
■商品別・カテゴリー別売上(前年同月比)
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
2023年
4月
2023年
5月
2023年
6月
2023年
7月
テレビ86.093.790.2103.394.390.190.081.490.591.788.794.1
エアコン106.1121.7106.990.6122.891.397.891.692.198.674.5140.7
冷蔵庫108.4100.8100.995.4108.3104.9121.497.698.396.692.4107.3
洗濯機96.7102.3109.599.299.793.3112.396.097.589.8101.8108.5
パソコン100.5104.2107.3111.5119.9112.2106.797.493.394.188.589.1
ELS事業
(リフォーム計)
108.3116.0111.993.3101.697.895.696.595.691.985.890.8

エディオンの7月度は全店で110.1%、直営店も110.1%となり、いずれも5ヶ月ぶりにプラスとなった。2023年度累計では99.3%と前期並みにまで回復している。商品別では「エアコン」が140.7%と大きくプラスになったほか、「冷蔵庫」が107.3%、「洗濯機」は108.5%と白物大物家電がプラスとなった。
店舗状況は新店がなく、退店は直営が2店舗(大阪府と岐阜県の非家電店舗)とFC1店舗があり、月末店舗数は1,208店になっている。

上新電機

上新電機 月次売上速報 2023年7月
■月次売上(前年同月比)
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
2023年
4月
2023年
5月
2023年
6月
2023年
7月
95.5107.399.199.5100.399.0105.396.195.194.389.8102.6
■商品別・カテゴリー別売上(前年同月比)
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
2023年
4月
2023年
5月
2023年
6月
2023年
7月
テレビ88.785.995.889.586.097.790.983.488.385.587.793.7
パソコン87.3101.795.3101.5100.4105.497.998.495.985.683.488.7
携帯電話110.7143.8139.9152.1133.3139.6130.2115.1121.5116.2115.9125.0
エアコン95.8124.5112.188.3120.699.992.787.267.582.171.9125.1
冷蔵庫91.193.295.187.594.9101.3105.695.392.287.384.695.4
洗濯機・クリーナー90.895.7104.092.689.994.0110.893.195.290.994.494.0

上新電機の7月度は102.6%と5ヶ月ぶりのプラスとなった。主要秀品別では「携帯電話」が125.0%と依然好調さをキープしたほか、他社同様に猛暑によって「エアコン」が125.1%と大きくプラスになっている。
店舗状況は出退店ともなく、月末店舗数は220店になっている。

コジマ

コジマ 月次売上速報 2023年7月
■月次売上(前年同月比)
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
2023年
4月
2023年
5月
2023年
6月
2023年
7月
既存店93.7106.498.297.398.293.490.486.490.490.689.297.6
全店95.6108.698.297.799.394.691.687.890.989.689.398.4
■商品別・カテゴリー別売上(前年同月比)
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
2023年
4月
2023年
5月
2023年
6月
2023年
7月
テレビ90.688.482.590.182.075.474.782.180.878.886.087.6
ブルーレイ・DVD
(録画機含む)
81.971.773.477.973.987.260.256.482.280.283.882.9
エアコン92.2120.4103.896.4109.389.887.684.975.990.373.7120.2
パソコン
(本体のみ)
96.593.398.5110.6110.9108.798.894.694.184.779.581.3
携帯電話96.0115.8115.6114.1110.3112.4107.189.7102.0102.0100.9108.1
洗濯機94.6109.0101.793.097.795.193.094.2101.599.3103.0104.0
冷蔵庫89.593.288.188.993.594.3101.392.492.091.087.097.0

コジマの7月度は既存店が97.6%、全店で98.4%といずれも10ヶ月連続のマイナスとなった。この結果、2023年8月期累計で既存店は94.3%、全店が94.9%と苦戦が続いている。月次売上速報によるとエアコンや扇風機などの季節家電は猛暑の影響で前年を大きく上回ったものの、EC販売施策の影響で前年を下回ったとしている。また、洗濯機はドラム式洗濯機が好調に推移したことで前年よりプラスに。
店舗状況は退店がなく、新店では東京臨海副都心エリアでは最大級となる「コジマ×ビックカメラ有明ガーデン店」がオープンしたことで、月丸店舗数は141店となっている。