【2024年上半期 家電・IT市場動向】前年比微減ながらAV・生活家電は復調気味に
GfK/NIQ Japanは、全国の有力家電・IT取扱店の販売実績データ等を基に、2024年上半期(1~6月)の家電およびIT市場の販売動向を発表した*1。
■国内家電小売市場 市場全体は微減だが主力商品は堅調に推移
2024年上半期の家電小売市場は約3.3兆円、前年比では1.9%の減少となった。金額規模としては直近5年で最も小さく、22年以降3年連続して縮小した。
大分類別の前年比ではカメラ関連が最も高い伸びを示した。レンズ交換式の高価格化に加え、コンパクトタイプにも回復の傾向が見られた。AV関連、生活家電はわずかに前年同期を上回った。AVではテレビやヘッドホン・イヤホンが堅調だった。生活家電では第2四半期(4-6月)のエアコンの販売が好調だったことに加え、理美容家電、調理家電も前年の金額を上回った。その一方でスマートフォンを中心とする電話関連、IT関連は前年の金額を下回った。電話関連は2023年末の端末値引額の上限見直しに伴う駆け込み需要の反動が尾を引いているかたちだ。IT関連は個人向けパソコンの買い替えが進まないことが要因となっている。
オンライン販売における家電小売市場規模は前年同期から微増となった。大分類別ではIT関連を除き前年の金額規模を上回った。家電小売市場規模全体におけるオンライン販売の金額構成比は前年同期から0.5%ポイント上昇し、21%となった。
下半期については、前年の金額規模をやや上回るものと見ている。生活家電が上半期の好調を維持し、電話関連、IT関連の落ち込みは上半期より小幅になるものと予想している。通年の家電小売市場規模としてはほぼ前年並みで着地するものと見られる。
■AV市場 テレビ前年並みも高画質モデルが伸長して下支えに
薄型テレビの販売台数は前年比1%減の220万台で、ほぼ前年並みとなった(図1)。コロナ特需からの反動減が続いていたが、下げ止まりの兆しが見えてきた。
タイプ別にみると、液晶テレビが前年並みで推移した一方で、有機ELテレビは10%減と振るわなかった。液晶テレビは大画面クラスを中心に「ミニLED」や「量子ドット」を搭載した高画質モデルが伸長し、市場を下支えした。ミニLEDは昨年から2倍以上、量子ドットは約1.4倍のプラス成長となった。税抜き平均価格は94,000円と前年から3%上昇した。
BDレコーダーの販売台数は前年比19%減の41万台と減少傾向が続いた。製品動向では、高機能製品の構成比が拡大した。4K録画に対応した4Kチューナー内蔵モデルは前年から11%ポイント伸長し、数量構成比46%となった。2TB以上のHDDディスクを搭載した大容量モデルは前年10%ポイント増の同59%、3チューナー以上を搭載するモデルも5%ポイント増の41%を占めた。その結果、BDレコーダーの税抜き平均価格は57,000円と、前年から9%上昇した。
ヘッドホン/ヘッドセット*2の販売数量は前年比3%減の890万本となった。特に、4割以上を占めるワイヤー付き製品はコロナ禍のテレワーク需要の反動が続いたことなどにより、前年比9%減であった。一方、これまで市場の成長を下支えしてきた完全ワイヤレスイヤホン*3は前年比8%増と依然として成長を続けている。同製品では、税抜き5千円未満の手頃な価格帯が、数量前年比10%増と好調に推移した。同時に、3万円以上の高価格帯も新製品の投入などによって前年から約1.5倍と著しい成長を遂げており、価格帯における二極化が進んだ。
■テレコム市場 スマートフォンは高価格化で市場は縮小
携帯電話市場は前年比18%減の1,130万台となった(図2)。そのうち96%を占めるスマートフォン(ファブレット含む)は同16%減の1,080万台、フィーチャーフォンは50万台と前年から半減した。
スマートフォン市場縮小の背景には、原材料価格の高騰や円安による端末価格の上昇が挙げられる。税抜き販売端末価格は前年比6%増の91,000円と高価格化が進んだため、製品がやや手に取りづらい環境にあったとみられる。加えて、23年末には電気通信事業法の改正により大幅な値引きが制限されたことも、直近の需要を押し下げた要因の一つと考えられる。
しかし、スマートフォンのストレージ容量や外側カメラの画素数では高性能な製品の割合が拡大し、価格の上昇とともに製品機能も向上している。
ウェアラブル端末*4は前年比4%増の160万本と、前年から拡大した。数量構成比で市場の過半数を占めるスマートウォッチは前年比4%減となったが、ランニングや山登りなどのスポーツ用途に訴求されているスポーツウォッチは同87%増と大幅に増加した。スポーツウォッチの数量構成比は前年から14%ポイント増加し、全体の31%を占めるまでに拡大した。この成長の背景には、税抜き1万円未満の比較的手頃な価格帯の製品ラインナップの拡充が挙げられる。同価格帯の販売数量は前年から2倍以上と顕著な増加を見せており、市場の拡大に大きく寄与した。
■IT・オフィス市場 PC・タブレット伸長するも個人向けは低調
パソコンおよびタブレット端末市場は前年比6%増の1,070万台となった(図3)。個人向け市場が前年比5%減と縮小した一方で、法人向け市場は同10%増と伸長した。
パソコン*5は前年比7%増の690万台となった。個人向け市場の販売台数は9%減の160万台と4年連続で市場が縮小した。19年から21年にかけての特需が一巡し、その反動減が続いていることに加え、製品の高価格化により購入しづらい状況が需要の縮小要因となったと考えられる。
一方、法人向け市場は同13%増の520万台となり、減少傾向にあったが今期はプラス成長に転じた。25年10月にWindows10サポート終了が控えており、その買い替え需要が市場を押し上げた可能性がある。
タブレット端末*6は前年比4%増の390万台となった。個人向け市場は新製品の発売などによって同2%増の120万台とやや伸長した。通信方式別にみると、キャリア回線付きは前年比15%減と縮小したが、数量構成比で8割弱を占めるWi-Fiモデルは同8%増と拡大し、市場を牽引した。法人向け市場は5%増の270万台と、パソコン同様プラス成長となった。
■イメージング市場 デジタルカメラは好調さを持続
デジタルカメラは昨年からの回復基調が続いており、前年比25%増の68万台と大きく伸長した。タイプ別にみると、コンパクトカメラが数量前年比28%増、レンズ交換式カメラは同21%増と、いずれも好調に推移した。コンパクトカメラは低価格帯の販売が拡大したことにより税抜き平均価格は前年比4%減、レンズ交換式カメラの平均価格は引き続き上昇し同3%増だった。デジタルカメラ全体での平均価格は、前年並みの95,000円となった。
交換レンズも、前年比17%増の28万本となった。ミラーレス一眼用レンズが数量前年比24%増とけん引した。交換レンズの平均価格は前年から5%上昇の105,000円となった。
■生活家電市場 エアコンの早期販売進み好調に推移
冷蔵庫は前年並みの210万台となった。容量クラス別の数量構成比は小容量(200L以下)で前年から2%ポイント増の46%となった。中容量(201~400L)は前年から1%減の21%、大容量(401L以上)も同1%減の33%となった。401L以上の大型冷蔵庫の平均価格は前年から1%上昇した。しかし小型冷蔵庫の構成比が拡大したことで、冷蔵庫市場全体の税抜き平均価格は前年から3%下落した。
洗濯機は前年並みの260万台となった(図4)。タイプ別の数量構成比は前年から変わらず、ドラム式が20%、縦型が78%、二槽式が2%となった。洗濯容量別の数量構成比では、小容量(洗濯容量6kg未満)が24%、中容量(6kg以上8kg未満)が26%、大容量(8kg以上)が50%を占めた。大容量のうち12kg以上の製品は依然として拡大基調にあり、洗濯機に占める数量構成比は前年の14%から15%となった。平均価格の上昇は一服し、洗濯機の税抜き平均価格は前年から3%下落の87,000円となった。
エアコンは前年から8%増の420万台となった(図5)。2023年の上半期はそれほど気温が上昇せず、販売は不調だった。それに対して、2024年4~6月は北海道東北で平年比+2.2度、その他地域でも平年比約+1度を記録するなど、夏場に入る前から暑い日が続いた。その結果、早期購入を中心に販売が好調に推移したと見られる。冷房能力別の数量構成比に大きな変化はなく、小部屋向けの2.2kWが47%と半数近くを占めた。全ての能力帯で平均価格が前年を上回り、市場全体では前年から4%上昇した。
掃除機は前年並みの360万台となった(図6)。スティックタイプの数量が前年から7%増となった一方、キャニスタータイプは同4%減、ロボットタイプは同16%減となった。掃除機の過半数を占めるスティックタイプの数量構成比は前年からさらに4%ポイント伸長して61%となった。掃除機の税抜き平均価格は前年から5%上昇の26,000円となった。
*1.全国の有力家電・IT取扱店(家電量販店、総合量販店、カメラ専門店、携帯電話専門店、ネット通販等)からPOS データ等を収集し、統計的な手法に基づき全国市場規模相当に拡大推計した
*2.ヘッドホン:マイク無しのイヤホン・ヘッドホン製品(ステレオのみ)、ヘッドセット:マイクを備えたイヤホン・ヘッドホン製品(ステレオ・モノラル)*3. 完全ワイヤレスイヤホン:左右のイヤホンが完全に独立したBluetooth搭載イヤホン
*4.ウェアラブル端末:搭載されているセンサーを利用して心拍や位置情報などのライフログを収集し、スマートフォン等と連携する機器および演算能力を持つ機器
*5.Windows 8/8.1/10搭載のスレート型情報端末を含む
*6.タブレット端末:画面サイズ5.6インチ以上のタッチスクリーンを備え、iOS、Android等の軽量OSを搭載するスレート型情報端末(7インチ未満の通話機能付き端末は含まない)
出典元:GfK/NIQ Japan プレスリリース