家電量販店5社 2023年3月期決算まとめ
大手家電量販企業5社は2023年3月期(2022年4月~2023年3月)の決算を5月の大型連休明けに発表した。
新型コロナ禍で、さまざまな要因によって相次いだ物価高や光熱費の高騰によって消費マインドが冷え込み、行動制限の撤廃での旅行・観光やイベントなどへの消費が回復する中にあって、家電量販企業にとっても2022年度は新たな局面を迎えることになった。
家電量販店5社の2022年度連結業績
大手家電量販店7社のうち、前期売上高7,530億円(会社概要による)だったヨドバシカメラは非上場で3月期決算は未公表、ビックカメラは8月期決算のため、2023年3月期の決算を公表したのは5社。
家電量販店最大手のヤマダホールディングスは売上高1兆6,005億8,600万円で前期比98.8%、経常利益は500億6,400万円で同67.5%、ケーズホールディングは売上高7,273億2,000万円で同98.7%、経常利益352億6,600万円で同75.8%、上新電機は売上高4,084億6,000万円で同99.7%、経常利益83億1,700万円で同85.7%と減収減益に。
エディオンは7,205億8,400万円で同101.0%、経常利益192億4,800万円で同89.2%の増収減益、ノジマは6,261億8,100万円で同110.8%、経常利益362億4,600万円で同101.0%の増収増益で着地した。
全般的に見れば、売上高は前期並みから微減に、経常利益は減少傾向にあった1年といえるだろう。
以下、各家電量販企業の決算短信から2022年度業績をもう少し詳しく見ていこう。
家電量販企業 2023年3月期 連結決算(通期)
金額単位:百万円
売上高 | 前期比 | 営業利益 | 前期比 | 経常利益 | 前期比 | 純利益 | 前期比 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ヤマダHD | 1,600,586 | 98.8% | 44,066 | 96.5% | 50,064 | 67.5% | 31,900 | 62.9% |
ケーズHD | 737,320 | 98.7% | 30,129 | 72.2% | 35,266 | 75.8% | 21,120 | 74.0% |
エディオン | 720,584 | 101.0% | 19,186 | 102.1% | 19,248 | 89.2% | 11,393 | 86.9% |
ノジマ | 626,181 | 110.8% | 33,572 | 101.2% | 36,246 | 101.0% | 23,315 | 90.2% |
上新電機 | 408,460 | 99.7% | 8,311 | 93.6% | 8,317 | 85.7% | 4,972 | 77.8% |
【参考】ビックカメラ 2023年8月期 第2四半期決算短信(連結・2022年9/1~2023/2/28)
金額単位:百万円
売上高 | 前期比 | 営業利益 | 前期比 | 経常利益 | 前期比 | 純利益 | 前期比 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ビックカメラ | 407,653 | 96.1% | 7,382 | 78.2% | 8,422 | 79.0% | 4,205 | 88.1% |
〔通期予想〕 | 830,000 | 104.7% | 15,500 | 86.8% | 17,500 | 84.1% | 7,800 | 135.3% |
〔通期予想進捗率〕 | 49.1% | ー | 47.6% | ー | 48.1% | ー | 53.9% | ー |
ヤマダホールディングスの業績動向
ヤマダホールディングスは中期3ヶ年経営計画のスタート年だったが、重点施策の1つである店舗開発の積極推進では、家電に加えて家具・インテリア、生活雑貨、リフォーム、玩具などくらしのあらゆるモノがそろう、地域最大級の品揃えの店として体験型新業態店「LIFE SELECT」を年度末までに合計29店舗出店。ネット販売と店舗を融合した「YAMADA Web.com店」、アウトレット・リユース商品を中心にしたアウトレット店を全国で展開。Eコマースでは自社ECサイトのリニューアルやテレビショッピング等を拡大。SPA商品の積極的な開発・商品化を進めてきた。
減収減益の主な要因は、家電を中心としたデンキ事業において、
・前期より継続している一過性の巣ごもり需要の反動減
・従業員の新型コロナウイルス感染による勤務時間減少に伴う販売機会ロス
・市場と連動したDX化による売上と利益の最適化に向けた改革途上に伴う粗利率の低下
・政策的なバランスシート改革取り組みによる仕入れ抑制の影響による粗利高の減少
・前年度の新型コロナウイルス感染症に伴う助成金収入減に伴う営業外利益の減少
ーーとしている。
なお、2022年3月期のセグメント別の業績は以下のようになっている。
金額単位:百万円
売上高 | 前期比 | 構成比 | 営業利益 | 前期比 | 構成比 | |
---|---|---|---|---|---|---|
デンキ事業 | 1,310,895 | 97.9% | 79.4% | 31,816 | 57.7% | 73.6% |
住建事業 | 272,360 | 111.5% | 16.5% | 8,576 | 116.5% | 19.8% |
金融事業 | 2,478 | 101.3% | 0.2% | 283 | 66.1% | 0.7% |
環境事業 | 31,803 | 111.6% | 1.9% | 1,489 | 121.2% | 3.4% |
その他事業 | 32,526 | 91.1% | 2.0% | 1,065 | 81.4% | 2.5% |
合計 | 1,650,062 | ー | 100.0% | 43,229 | ー | 100.0% |
ケーズホールディングの業績動向
他の家電量販企業のように住宅・リフォーム事業の拡大、非家電商品販売の強化といった施策ではなく、家電販売に注力している同社にとって家電需要全般の縮小傾向は業績にも大きな影響を与えることになる。
2023年3月期の売上高については、テレビが前年の東京オリンピック・パラリンピック開催による買い替え需要の反動により低調に推移。エアコンなどの季節商品は6月が好調だったものの7、8月に猛暑日が続かなかったこと、11月以降も暖冬傾向により計画を下回り、第4四半期は物価上昇による消費マインドの低下や買い替えサイクルの長期化が顕著になったことで前年同期を下回った影響としている。
利益面では、新型コロナウイルス感染症の影響で自粛していたチラシの折込や店舗改装等を再開したことによる広告宣伝費、修繕費等が増加したこともあって前年同期を大きく下回る結果となった。
同社は2021年に公表した「中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)」で掲げた数値目標を取り下げたが、家電専門店としての魅力度向上にさらに磨きをかけ、
・既存店現状水準の維持
・新規出店によるシェア拡大
・高付加価値商品販売の強化
・商品開発
・経費コントロール
ーーを継続していく考えだ。
エディオンの業績動向
エディオンは新型コロナ禍での巣ごもり需要といった「特需」があった2020年度、その反動の2021年度もあったが、基本的には安定した経営状況にあり、会計基準の変更を除けば、コロナ前の水準に回復したといえる。
商品別ではエアコンは6月下旬から7月上旬の記録的な高温や12月下旬の厳しい寒さなどから、好調に推移。その他主要商品もテレビを除けば堅調で、前期を上回っている。リフォームなどの住宅設備やゲーム・玩具についても商品供給状況が安定したことで売上も伸長した。
減益になった主な要因は助成金収入が減少(前連結会計年度24億2,900万円が4,800万円と23億8,000万円減少)したことなどによるもの。
同社は2022年4月にニトリホールディングスとの資本業務提携を締結しており、既に店舗ではニトリの一部家具・インテリア商品の取り扱いを開始している。今後コラボブースの開設などによって両社の事業拡大はさらに推進されることになるだろう。
ノジマの業績動向
2023年3月期決算の家電量販企業5社のうち、唯一増収増益となったのがノジマ。その最大要因は携帯電話販売業界大手のコネクシオをTOBにより連結子会社にしたことだろう。
コネクシオの連結調整前の売上高は541億9,600万円、純利益は2億2,700万円あり、逆風が強いにもかかわらず、同社のキャリアショップ運営事業は売上高2,343億4,400万円(前期比124.7%)、経常利益は61億6,600万円(同104.7%)まで伸長した。
デジタル家電専門店運営事業も店舗・人材への投資を継続し、首都圏の好立地への積極的な出店を行ったこともあり、売上高は2,665億6,100万円(同106.0%)と堅調に推移し、経常利益も206億4,300万円(同99.8%)と前期並みを維持した。
同社はコネクシオ以外にも積極的なM&Aを進めており、店舗展開でも百貨店への出店など従来の「空白地域」での店舗展開を行っている。2023年度以降の動向も注目される企業だ。
上新電機の業績動向
上新電機は2020年度のコロナ禍による需要の前倒しに対する反動、物価高に起因する消費の伸び悩み、行動制限緩和によるレジャー支出の増加等により、新製品への買い替えタイミングとなった携帯電話等を除いて、商品全般で前年実績を下回る状況になった。これまで好調な伸びを示していたインターネット販売も2023年3月期は755億5,200万円(売上構成比18.5%、2022年3月期は758億9,000万円)で、足踏み状態になった。
今後の見通しとしては、景気の先行きが依然として極めて不透明な状況が続く中で、家電販売でも新型コロナ禍での各種制限解除による消費動向の変化に加えて、原材料高騰に起因する経済指標の悪化、消費マインドの低下、需要の低迷による同業者間の競争がますます激しくなっていくことが予想されるが、新たな中期経営計画「JT-2025経営計画」(2023年度~2025年度)を策定。収益力の強化に取り組んでいく中で投資効率を高いレベルで持続的に確保できる、「筋肉質でサステナブルな経営体制」への移行を目指すとしている。
家電量販企業 2024年3月期 連結業績予想
金額単位:百万円
売上高 | 前期比 | 営業利益 | 前期比 | 経常利益 | 前期比 | 純利益 | 前期比 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ヤマダHD | 1,686,000 | 105.3% | 50,500 | 114.6% | 55,100 | 110.1% | 31,900 | 100.2% |
ケーズHD | 766,000 | 103.9% | 30,500 | 101.2% | 35,500 | 100.7% | 21,500 | 101.8% |
エディオン | 745,000 | 103.4% | 19,500 | 101.6% | 19,500 | 101.3% | 11,500 | 100.9% |
ノジマ | 740,000 | 118.2% | 38,000 | 113.2% | 41,000 | 113.1% | 61,000 | 109.4% |
上新電機 | 410,000 | 100.4% | 9,000 | 108.3% | 9,000 | 108.2% | 6,000 | 120.7% |