【商業動態統計】2022年度の家電量販店販売動向振り返り
経済産業省の「商業動態統計」3月分の確報が公表され、年度ベースの販売金額がまとまった。
同統計では「家電大型専門店」(家電量販店)の販売額が集計されており、直近1年間の平均調査店舗数は2,660店強。大手家電量販企業7社の直営店・連結対象子会社の店舗合計が約2,600店舗なので、ほぼカバーしていることになる。
今回は2022年度の販売額と、過去5年間分の動向をまとめてみた。
なお、同統計での商品分類は2021年1月分より12区分に細分化して統計にしているが、従前からの推移を見るため6区分で比較している。
■2022年度の家電量販店販売額
2022年度の家電量販店販売額は4兆6,664.71億円となり、前年度比では99.8%とほぼ横ばいとなった。
同統計では判断できないものの、部品代の上昇・物流費の高騰等の影響により、ほとんどの製品単価が上がっているにもかかわらず、販売額がそれほど伸びていないのは、全般的に販売台数が低迷したと考えられる。
2022年度 | AV家電 | 情報家電 | 通信家電 | カメラ類 | 生活家電 | その他 | 商品販売額 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
金額 | 589,775 | 1,040,656 | 369,147 | 120,349 | 2,009,775 | 536,769 | 4,666,471 |
前期比 | 89.8% | 100.8% | 106.6% | 111.3% | 99.3% | 105.4% | 99.8% |
商品分類ごとに見ると、金額規模の大きい「情報家電」(統計分類上ではパソコンやタブレット端末、ゲーム機本体、プリンターなどのパソコン周辺機器等)は1兆406.56億円で、対前年度比100.8%になったものの、「生活家電」は2兆97.75億円(同99.3%)、「AV家電」が5,897.75億円(同89.8%)と、一般的な家電製品は前年度割れになっている。
このように商品分類で見ていくと、単価上昇の中でもキャリア各社の新しい契約プランが進んでいる「通信家電」(携帯電話・スマートフォンおよびアクセサリー類等)や「その他」(住宅設備家電や非家電商品等)が下支えとなり、かろうじて前年度並みを維持したといった見方もできる。
■特需反動も収まり、コロナ禍前並みになったが…
次に過去5年間の同統計上の販売額推移を見てみよう。
2018年度、2019年度は前期比2%アップの漸増となっていたが、これは2010年の地デジ以降に伴って需要のピークを迎えたテレビの買い替えが本格化したこと、エアコンや冷蔵庫、洗濯機などの生活家電の商品買い替え需要が安定していたことが要因と考えられる。
そして、、2020年度は新型コロナウイルス感染拡大による、いわゆる「巣ごもり需要」や「テレワーク需要」といったある意味での『特需』、そのトリガーともなった特別定額給付金などの影響で販売額は4兆9,172.11億円、前年度比108.4%と大きく伸長。
外出自粛・ステイホームの生活スタイルになったことで、デジタルカメラを中心とする「カメラ類」が大きく落ち込み、同様に「通信家電」「その他」が伸び悩む中で「情報家電」「生活家電」(特に調理家電や家事家電)、「AV家電」が伸びた。
2020年度の『特需』については、新型コロナ禍にあって生活スタイルが一変したこともあるが、「買い替え需要の先食いにすぎない」といった見方も少なくない。
事実、2021年度はその反動によって販売額は4兆6,757.12億円(同95.1%)と低調となり、反動の影響が薄れてきたとはいえ、2022年度は漸減となった。それでも、新型コロナ禍前の水準になるといった大方の予測は的中する格好にはなっているが、既に新年度の2023年になってからも、今ひとつ伸びる気配が見当たらない。
■家電市場は徐々に縮小する?
足下で考えると2023年度は前年度予想に反して販売が伸びなかった「エアコン」の動向が1つのキーポイントとなる。
気象庁が2月21日に発表した「暖候期予報」(6月~8月)によると、エルニーニョ現象が残る前半を中心に、沖縄・奄美地方の「ほぼ平年並みの気温」以外、全国的に「平年並みか高い気温」といった見込みが出ている。
天候要因に左右されやすい「エアコン」などの季節家電が伸長するのか、前年度のように6月に集中して、7月後半から販売不振になってしまうのか注目される。
いずれにしても、大半の家電製品は買い替え需要に支えられていることに変わりはなく、少子高齢化の進行に加えて、世界的なインフレ傾向や光熱費や物価上昇による消費志向の萎縮は否めない。
家電量販企業は個々の戦略に基づいて住宅・リフォーム関連や非家電分野の販売強化、OMOによる顧客接触頻度アップなどさまざまな取り組みを進めているが、ここ数年の推移から考えると、家電市場自体は徐々に縮小する可能性も大いに予測されるだろう。