2023年度の白物家電出荷見通し

2023年度が始まった。本年度は3年間続いた新型コロナ禍が徐々に収束方向にあり、本格的な経済回復と景気低迷からの脱却が期待されている。一方で、昨年以降ほぼすべての分野の商品・サービスの価格高騰が続いており、消費の落ち込み傾向は止まる兆しが見えてこない。家電製品も例外ではなく、周知のように各種部品の値上げや物流費等のアップの影響で、断続的に単価上昇が進んでいる。
2023年度の家電市場はどうなるのか、一般社団法人日本電機工業会(JEMA)が3月に公表した「2023年度 電気機器の見通し」に基づき、出荷ベースでの白物家電の需要予測をまとめた。

■2022年度は金額で微増して台数は減少

まず最初に、前年2022年度の白物家電全体の国内出荷金額見通しについて、JEMAでは2兆5,888億円(前年度実績比103.0%)と見込んでいる。前半は上海のロックダウンに代表されるサプライチェーンの混乱や、部品供給不足で出荷が低迷していたものの、後半はこれらの問題が解消された。
出荷金額のアップの最大要因は原材料・輸送費の高騰により、多くの白物家電の単価が上昇したため。高付加価値(多機能や容量の大きい上位モデル)志向の高まりも挙げられているが、実態は高付加価値商品と低価格商品に二極化してきている。
さらに、物価上昇による購買意欲が抑制されたこと、つまり「価格がどんどん高くなってる時期」での買い控えが顕著になってきたことで、販売台数は低迷しており、それだけ出荷台数も減少している。金額ベースは上昇しても、台数ベースは低迷といった、市場の成長性で考えると良い方向とは言いがたい状態といえるだろう。

白物家電 2023年度出荷金額の見通し
■2023年度の市場の伸びは鈍化する?

白物家電のうちエアコンや冷蔵庫、洗濯機などの大型商品、および電子レンジやジャー炊飯器は、ほとんどが「買い替え」需要によるもの。その買い替えでは故障によるもの以外、高付加価値の商品へのランクアップはそれほど期待できるものでもない。さまざまな経済指標で景気は緩やかに持ち直し傾向にあるとの見方はあるものの、実態としては相次ぐ「値上げ」の影響が強く、残念ながら市場が大きく伸びる要因は非常に少ないといえる。
一方で白物家電の原材料価格の高騰は続いており、その結果として、JEMAの2023年度の見通しでは白物家電全体での出荷金額は2兆2,326億円(前年度見込み比101.7%)で漸増になるとしている。
2020年度は新型コロナウイルス感染拡大により、多くの産業が打撃を被って低迷だったのに対し、家電業界は「巣ごもり需要」というある意味での「特需」によって需要が伸びた。白物家電は外出自粛・在宅時間の増加によってエアコン、冷蔵庫をはじめ調理家電などでの伸長が見られた。ただ、その多くは需要の前倒しだった側面も強く、2021年度は反動によって出荷台数が低迷し、出荷金額もダウン。そこからの持ち直しといった見方もできるのだが、やはり単価上昇による「買い控え」の強まり、さらには外出機会の増加によって家電以外の消費に振り向けられていく傾向もある。
それでも買い替え需要が主体である白物家電では、極端な増減が起きづらいのも事実であり、2023年度は漸増ないしは横ばいと考えるのが妥当といえるだろう。

以下、白物家電の主要製品の出荷台数・金額の推移、2023年度見通しを見てみる。

■ルームエアコン
エアコン2023年度 出荷台数
ルームエアコン 出荷台数の推移
ルームエアコン 2023年度出荷金額見通し
ルームエアコン 出荷金額の推移

季節要因に左右されやすいルームエアコンであるが、2020年度は新型コロナ禍での在宅時間の増加と猛暑によって出荷台数が1,000万台を超えた。ここ数年は需要増加の時期が前後しているものの、総じて猛暑になる傾向が強かったこともあり900万台以上の高水準にあったが、2023年度は漸減により900万台を少し割り込む見通し。
出荷金額は前年度を若干上回ることが見込まれる。ただし、リビング向けの能力クラスの大きい商品よりも、2.2kWや2.5kWクラスが中心になっているため、大幅な金額アップは難しい状況にある。

■冷蔵庫
冷蔵庫 2023年度出荷台数見通し
冷蔵庫 出荷台数の推移
冷蔵庫 2023年度出荷金額の見通し
冷蔵庫 出荷金額の推移

大容量化が進み401L以上クラスが中心となってきているが、出荷台数は2022年度からほぼ横ばいが見込まれている。冷蔵庫も材料費や物流費の高騰の影響を受けて単価が上昇しているが、各容量クラスで台数が伸び悩んでおり、金額も前年度並みとなりそう。

■洗濯機
洗濯機 2023年度出荷台数の見通し
洗濯機 出荷台数の推移
洗濯機 2023年度出荷金額の見通し
洗濯機 出荷金額の推移

2020年度の新型コロナ禍での「特需」の反動が大きい洗濯機は2021年度以降、前年度割れが続いている。世帯増加傾向もピークを過ぎて新規購入がそれほど見込めないことからも、2023年度の出荷台数は微減のまま推移すると見込まれる。
出荷金額はドラム式を中心に単価の高い洗濯乾燥機の比率が大きくなっていることから、引き続き微増になりそうである。

白物家電
■掃除機
掃除機 2023年度出荷台数の見通し
掃除機 出荷台数の推移
掃除機 2023年度出荷金額の見通し
掃除機 出荷金額の推移

在宅時間の増加により需要の伸びた掃除機。2022年度は極端に台数・金額ともに伸びたことになるが、これは出荷統計に大手メーカーが参加したことが大きな要因と考えられる。
2023年度は台数ベースでほぼ横ばいになり、金額は若干の伸びがあると見込まれる。既に従来のキャニスタータイプが大幅に減少してスティックタイプに移行しているが、一度伸長しながらも反動で減少したロボット掃除機が再び持ち直してきており、その上乗せが多少期待できそうだ。

■電子レンジ
電子レンジ 2023年度出荷金額の見通し
電子レンジ 出荷金額の推移
電子レンジ 2023年度出荷金額の見通し
電子レンジ 出荷金額の推移

新型コロナ禍での外出自粛、内食志向の強まりで需要が伸びた調理家電のうち、電子レンジは高付加価値のオーブンレンジタイプに注目が高まったが、ほぼ一段落した格好に。ほぼコロナ禍前の水準に戻りつつあり、2023年度は出荷台数・金額とも対前年度比で横ばいになる見込み。

■ジャー炊飯器
ジャー炊飯器 2023年度出荷台数の見通し
ジャー炊飯器 出荷台数の推移
ジャー炊飯器 2023年度出荷金額の見通し
ジャー炊飯器 出荷金額の推移

電子レンジ同様に「巣ごもり需要」の恩恵があったジャー炊飯器も出荷台数では2021年度以降減少気味に。2023年度も対前年度比で微減になるとの見込み。
金額ベースでは、高付加価値商品が一種のブームになった時期もあったが、既にそこまでのこだわりや多機能を求める層は限定されており、台数減少に伴って横ばいになっている。

※出典元:JEMA 2023年度 電気機器の見通し