【家電量販月次速報】ビック以外は軒並みマイナス基調

家電量販企業大手7社のうち、IR情報として月次売上速報を公表しているのはビックカメラ、ケーズホールディングス、エディオン、上新電機、コジマ(ビックカメラの子会社)の5社。いずれもPOS受注売上ベースの数字であり実際の販売額とは合致せず通期の売上等とも異なるが、家電量販企業の足元の販売動向や月々の変化などを知る上で重要な情報となる。
2023年3月度の月次売上速報が出そろった。

家電量販企業5社の3月度売上速報

家電量販月次売上速報 2023年3月度

3月は新生活を迎える方の生活必需品として多くの家電製品のまとめ買いなどが多く、春商戦のピークとなる月であり、それに併せたキャンペーンや特設展示が多く展開されている。また、多くの家電量販企業にとって期末となるため「決算セール」で店頭も賑わいをみせる時期でもある。
しかし、月次売上速報を公表している家電量販企業の多くは伸長が期待される冷蔵庫、洗濯機などがマイナスになっており、比較的小型クラスが主体になるものの需要が高まるテレビも昨年からの落ち込みが依然続いている状態となった。
その結果、郊外型で展開している家電量販企業4社は軒並み前年比マイナスとなり、前年同月がコロナ禍の「特需」の反動で低迷していたことを考えると、さらに落ち込みが大きくなっていることになる。
2022年度の最終月ということで期待されていたにもかかわらず、伸び悩んだため、年度トータルではエディオンが前年横ばいになったが、ケーズホールディングスや上新電機は前年割れとなった。月次売上速報はPOS受注ベースのものであり、通期決算売上とは異なるものであることを加味しなければならず、今後の決算を待たなければならないが、やや苦戦した1年となりそうだ。
その中で、ビックカメラは昨年11月以降の好調さを堅持しており、公表企業の中では唯一3月もプラスとなった。要因としてはコロナ禍がある程度収束してきていることで、来店客が増加しており、加えて「水際対策」の実質的廃止によって2019年以前のインバウンド需要の回復傾向が後押しになっていると考えられる。
年初からの動向を見ていくと、2023年は全般的に経済回復に期待が持たれるといいながら、物価上昇も続いており、光熱費や物流費のアップも収まらないことを考慮すると、引き続き家電市場全般は苦戦することも懸念される。

ビックカメラ

ビックカメラ 月次売上速報 2023年3月
■月次売上(前年同月比)
2022年
4月
2022年
5月
2022年
6月
2022年
7月
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
100.896.1101.798.0106.5113.393.5106.4101.6104.0105.9104.2
■商品別・カテゴリー別売上(前年同月比)
2022年
4月
2022年
5月
2022年
6月
2022年
7月
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
音響映像商品99.5102.495.887.1110.3101.9106.2105.696.3101.0101.3101.5
家庭電化商品112.097.4112.3100.2103.0108.1102.0100.0100.3100.0104.9101.9
情報通信機器商品99.690.796.897.2100.7111.472.694.396.699.095.193.8
その他の商品86.795.692.8105.4117.3137.2101.7134.0113.4120.9126.8134.3

ビックカメラの3月度は104.2%と5ヶ月連続のプラスとなった。この結果、2023年8月期累計でも103.9%と好調さをキープしている。新型コロナ禍が落ち着きを見せ、ターミナル利用客が元に戻り来店客の増加、およびコロナ以前の売上で大きな下支えになっていたインバウンド需要も回復基調にあることがうかがえる。月次売上速報での商品カテゴリー別の動向を見ると、「音響映像商品」ではデジタルカメラが好調。「家庭電化商品」は理美容家電が好調、調理家電が堅調だったとしている。また、「その他の商品」はゲーム、時計、医薬品、玩具、スポーツ用品など総じて好調に推移している。店舗状況では、2007年に出店した駅直結の「ビックカメラJR京都駅店」を5月7日に閉店すると報じられている。

ケーズホールディングス

ケーズホールディングス月次売上 2023年3月
■月次売上(前年同月比)
2022年
4月
2022年
5月
2022年
6月
2022年
7月
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
103.093.4104.991.892.3106.197.893.1100.696.799.694.4
■商品別・カテゴリー別売上(前年同月比)
2022年
4月
2022年
5月
2022年
6月
2202年
7月
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
テレビ99.289.083.677.787.596.587.088.693.487.886.278.2
パソコン・情報機器96.585.994.9101.897.3100.5103.4109.9116.3116.0105.499.9
冷蔵庫111.2105.4115.3112.399.6113.095.195.8103.1103.6116.297.2
洗濯機108.699.4101.1106.292.5120.3106.094.998.294.6103.198.0
クリーナー96.191.6101.7104.594.2105.6123.382.892.692.290.394.8
調理家電95.191.694.194.990.0100.499.396.098.194.495.290.5
理美容・健康器具96.688.791.496.197.5101.0100.7100.0103.0100.299.797.7
エアコン132.5102.1127.580.693.0131.898.286.1113.788.191.891.8

ケーズホールディングスの3月度は94.4%と3ヶ月連続のマイナスとなった。これにより2023年3月期の第4四半期計では96.7%、2022年度計で97.6%と厳しい結果での着地となった。商品別ではいずれも前年比割れとなり、6ヶ月連続プラスと好調だった「パソコン・情報機器」も99.9%となっている。店舗状況は新店が2店舗(和歌山県・兵庫県)あり、退店はなかったため、月末店舗数は550店(前期末より17店舗増)となっている。

エディオン

エディオン月次売上 2023年3月
■月次売上(前年同月比)
2022年
4月
2022年
5月
2022年
6月
2022年
7月
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
全店103.097.8103.994.097.8106.2101.597.8102.896.5103.097.2
直営店102.698.3103.393.997.7106.9101.499.0102.595.8103.597.1
■商品別・カテゴリー別売上(前年同月比)
2022年
4月
2022年
5月
2022年
6月
2022年
7月
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
テレビ94.988.977.775.786.093.790.2103.394.390.190.081.4
エアコン135.5115.1140.186.7106.1121.7106.990.6122.891.397.891.6
冷蔵庫111.9108.1107.7101.6108.4100.8100.995.4108.3104.9121.497.6
洗濯機106.6101.797.2101.996.7102.3109.599.299.793.3112.396.0
パソコン91.087.288.7100.2100.5104.2107.3111.5119.9112.2106.797.4
ELS事業
(リフォーム計)
132.7122.5116.4123.5108.3116.0111.993.3101.697.895.696.5

エディオンの3月度は全店で97.2%、直営店で97.1%といずれも2ヶ月ぶりのマイナスとなった。これにより、2022年度下半期は全店が99.7%、直営店は99.8%となったが、年度計では全店、直営店とも100%を維持した。商品別ではいずれも前年比マイナスとなり、ELS事業(リフォーム計)も96.5%と3ヶ月連続のマイナスになっている。店舗状況は新店がFCで1店舗あり、退店は直営店で3店舗(うち2店舗は携帯電話専門店)、FCで1店舗あったため、月末店舗数は1,208店となった。

上新電機

上新電機月次売上 2023年3月
■月次売上(前年同月比)
2022年
4月
2022年
5月
2022年
6月
2022年
7月
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
95.3100.9103.789.895.5107.399.199.5100.399.0105.396.1
■商品別・カテゴリー別売上(前年同月比)
2022年
4月
2022年
5月
2022年
6月
2022年
7月
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
テレビ89.294.587.875.588.785.995.889.586.097.790.983.4
パソコン84.397.591.880.787.3101.795.3101.5100.4105.497.998.4
携帯電話91.7125.4129.2128.6110.7143.8139.9152.1133.3139.6130.2115.1
エアコン122.9111.9132.682.195.8124.5112.188.3120.699.992.787.2
冷蔵庫100.898.1107.395.791.193.295.187.594.9101.3105.695.3
洗濯機・クリーナー88.092.694.198.990.895.7104.092.689.994.0110.893.1

上新電機の3月度は83.4%と2ヶ月ぶりのマイナスとなった。これにより2023年3月期第4四半期では99.7%、2022年度通期では99.1%といった結果になった。商品別では「携帯電話」が115.1%と依然好調だったものの、前月はプラスになっていた「冷蔵庫」「洗濯機・クリーナー」をはじめ主要商品はいずれもマイナス。店舗状況は出退店ともなく、月末店舗数は221店(前期末より2店舗減少)となっている。

コジマ

コジマ月次売上 2023年3月
■月次売上(前年同月比)
2022年
4月
2022年
5月
2022年
6月
2022年
7月
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
既存店95.787.1101.799.493.7106.498.297.398.293.490.486.4
全店97.290.1103.399.895.6108.698.297.799.394.691.687.8
■商品別・カテゴリー別売上(前年同月比)
2022年
4月
2022年
5月
2022年
6月
2022年
7月
2022年
8月
2022年
9月
2022年
10月
2022年
11月
2022年
12月
2023年
1月
2023年
2月
2023年
3月
テレビ84.180.673.873.290.688.482.590.182.075.474.782.1
ブルーレイ・DVD
(録画機含む)
72.561.855.355.681.971.773.477.973.987.260.256.4
エアコン130.591.8122.081.592.2120.4103.896.4109.389.887.684.9
パソコン
(本体のみ)
89.585.197.8109.396.593.398.5110.6110.9108.798.894.6
携帯電話92.0105.4127.3124.996.0115.8115.6114.1110.3112.4107.189.7
洗濯機94.082.794.1101.194.6109.0101.793.097.795.193.094.2
冷蔵庫104.189.8104.2100.989.593.288.188.993.594.3101.392.4

コジマの3月度は既存店が86.4%、全店は87.8%といずれも6ヶ月連続のマイナスとなった。今期に入ってから出退店がなく、既存店の売上で苦戦が続いていることになる。商品別に見ても月次売上速報によるとテレビは前年までの「巣ごもり需要」の反動、エアコンは暖かい日が多かったことから前年を下回り、携帯電話も前年の新商品発売で好調だったのに対するもので下回っている。一方、ドアホンは、防犯意識の高まりで前月に引き続き好調。その他、ゲーム機本体や玩具などが好調に推移したとしている。店舗状況は月末店舗数が変わらず141店となっている。